身近なところに楽しみを見いだし、少しずつ前に進む
4歳になる娘の杏ちゃんを抱きかかえて満面の笑みを浮かべる村上萌さんは2011年、24歳のときに起業、翌年プロサッカー選手・都倉賢さんと結婚し、2017年に出産。東京にオフィスを構えながら、都倉さんの移籍にともなって北海道や大阪、そして長崎と住まいを変え、この10年ほどで大きく変化してきたように見えます。
「変わろうと思って変わってきたというよりは、流れるようにやってきたというところがあって。ただ、変化に対してポジティブではありましたね。会社も、『どうしたら自分のできることで人の役に立てるか』『どうすれば楽しくなるか』と考えて工夫を続けていたら、仲間ができて今の形になっていったかんじです」
現在は長崎と東京の二拠点生活。その状況もポジティブに活かしているようです。
「二拠点生活をしていると時間が有限であることがはっきりして、そのタイミングでやっておかないと進まないことが明確になる。そこから生まれる行動力が、チャンスを引き寄せているのかもしれません」
そうした考えは、村上さんが立ち上げ、仲間と運営しているコミュニティメディア『NEXTWEEKEND』にも通じています。そこで提案しているのは、週末に「季節の楽しみと小さな工夫で、理想の生活を叶える」方法。
「何かやりたいことがあったとして、0か100か極端に考えて、今はまだできない、落ち着いたらやろうと考える人は少なくないと思います。でも、それで『気づいたら何年経ってもできていない』と絶望するくらいだったら、数日後の週末に、例えばキャロットケーキでも焼いてみる。そうしたら『私って案外できるじゃん』と思えて、次はこれをやってみようと希望が湧いてきたりします。希望と行動を結びつけていって、自分の選択に自信を持つこと。そして自分自身に期待してちゃんと楽しみを持つことが大事。希望こそ、この時代を歩いていくヒントだと思うので」
コロナ禍でも読者に暗い気持ちになってほしくないという思いから試行錯誤して発信をつづけていると、昨年12月にSNSで「#ありがとうNEXTWEEKEND」というタグが生まれ、たくさんのお礼メッセージが届いたそう。
「それはうれしかったですね。目の前の自分の生活、目の前の大切な人をちゃんと楽しくしていくということは元々『NEXTWEEKEND』で提案していたことですが、1年後に世界がどうなっているかわからない状況のなかで、それが大事だと改めて思います」
日常の見過ごされがちな、けれど大切な気づきをシェアしている村上さんですが、子育てをしていると、娘の杏ちゃんに気づかされることが多いと言います。
「彼女を通して見る世界って、ものすごく希望に満ち溢れていて。言い訳もないし、疲労もないし、いつも目の前のことを楽しみにしている。それを見ていると、自分ができない理由を探しがちになっていたところが浮き彫りになります。あと、『これってどういう意味？』『なんであれはダメなの？』という子どもの質問は、大人が普段見ないように蓋をしている部分を鋭く突いてくる。何か聞かれるたびに考えさせられることがありますね」
うれしくもあり、さみしくもある子どもの成長。そこでも村上さんは今を大切に、丁寧に向き合っています。
「これからも彼女と歩みを積み重ねていくのが楽しみですね。日本人って照れがあって『I love you』をあまり素直に伝えられないけれど、子どもとは何の恥じらいもなく言い合ってハグできる。いつかきっと反抗期も来るし、彼女も自分の予定で忙しくなると思うので、今このピュアな時にいっぱい言っておきたいという気持ちはあります。きっとどこかに残ってくれると思うから」
村上萌 Moe Murakami
1987年生まれ、神奈川県出身。ライフスタイルプロデューサー。2011年に株式会社Gartenを設立。雑誌やウェブマガジン、イベント、商品を通して「次の週末に叶えたい生活」を発信する『NEXTWEEKEND』を主宰。母がコートやブーツを愛用し、時には共用していたというアニエスベーのアイテムには「名前を聞くだけでワクワクする」ような思い出がある。
