アニエスベーと5人の表現者たち
agnès b. with Shuta Hasunuma
映画、音楽、アート…アニエスベーが大切にしてきたスピリットに共鳴する、独自のスタイルを持つ5人の表現者。
最新コレクションを纏い、それぞれの表現活動やオリジナリティについて語る連載をThe Fashion Postで公開中。
第5回に登場するのは、音楽家の蓮沼執太。映像作品や舞台などの楽曲制作を手がける他、さまざまなクリエイターとコラボレーションをし、個展やインスタレーションなどアート作品の制作も積極的に行う、活動の幅に制限を持たない彼。新しいものをクリエーションする上で大切なこと、蓮沼さんが考える独自性について話を伺いました。
−これまでもたびたびプロジェクト名や楽曲名として登場している「ウインドアンドウインドウズ」も、今年、新たなプロジェクトとして活動をスタートされましたね。これはどんなものになるのでしょうか?
ライフワークと言ったら大袈裟かもしれませんが、先ほどお話しした通り、僕は集団で何かを作っていくことが多いので、自分が活動するにあたって、わかりやすく蓮沼執太印というか、自分発信のものによくその名前を使っています。2019年までニューヨークに住んでいたのですが、日本の方たちとコラボレーションするときは、日本に来て集中して作業してまた帰るという一期一会のものだったんです。それはそれでよかったけれど、もう少し継続的に自分の作っているもの、考えやアイディアを、音楽だけでなくさまざまなフィールドでアウトプットするスペースができたらいいなと思い、いろんな視点を持った仲間を募って、コミュニケーションを取り始めて、徐々に軌道に乗ってきました。なぜかというと、これだけ情報や選択肢に溢れた世の中になっていると、選び取るということがすごく大切だなと思ったんですね。昔を考えると、一つのことを極めるのがベストという価値観のもとに動いてきたかもしれないけれど、現状の価値観をどこかで疑うことが自分の人生の時間軸の中で新しいものを作るきっかけになるんじゃないかと。自分自身、何かを作ろうと思ったときに、パラダイムを変えるということを意識してやってきましたし。だから、技術者が揃った集団や会社みたいなものではなく、かたちがぐにゃぐにゃ変わっていくようなコミュニティやアセンブリーみたいなニュアンスで僕は捉えています。
−独自のスタイルを持っているという点でアニエスベーと共鳴する蓮沼さんですが、アニエスベーというブランドにはどんな印象がありますか?
僕は80年代生まれなので、成長とともにある存在でした。特に、学生の頃って、アートやカルチャーに敏感じゃないですか。敏感だけど、まだわけがわからないという最初の頃に、媒介になってアーティストや映画について教えてくれるような、ずっとすごく近いところにいるブランドだと思います。ブランドがメディアになっているということはすごく大事ですし、そうやって時代を映しているんだなという印象があります。
−蓮沼さんは、オリジナリティという言葉をどんなふうに捉えていますか?
素のままという感じですかね。素であることが常にいいとも思わないけれど。一応、何かを作っている人という枠の中で考えるのであれば、どんなに技術が発達したとしても、生きているうちにできることは限られていると思いますし、特に音楽というジャンルは、過去の作品が既に大量に世界中にあるので、自分はその何十年かの期間にたまたま参加しているくらいの感覚なんです。それで、が故にどうにかして新しいものを作っていくという意気込みや姿勢はすごく大切なのではないかと。新しいものが作れるかどうかはわからないんですよ。わからないけど、姿勢としては、常に新しいと思えるものを作っていかなきゃいけない。そうすると、自分に素直にならないといけなくて。僕の場合は、どこかで使った手法をもう1回使うみたいなことはできないので。同じことをやる行為を否定してるわけではなくて、どちらかというと作り手である自分は、そういう考えのもとにやっています。
model: shuta hasunuma
photography: naoya matsumoto
interview: tomoko ogawa
edit: yuki namba
b. yourself
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