水戸部七絵『座る人 “Sit-in”』展
2023年12月13日~
座る人 “Sit-in”
水戸部 七絵 Nanae Mitobe
会場:アニエスベー ギャラリー ブティック
東京都港区南青山5-7-25
ラ・フルール南青山2F
会期:2023年12月16日(土) – 2024年1月21日(日)
[月曜休廊・冬季休暇:2023年12月27日(水) – 2024年1月5日(金)]
時間:12:00 – 19:00
広報協力:YN Associates
会場設営:糟谷健三
※本展示に関するお問合せ先
akemi.kouda-r@agnesb.co.jp
担当:古宇田
アニエスベー ギャラリー ブティックは、2023年12月16日(土)から2024年1月21日(日)まで、水戸部七絵の個展『座る人 “Sit-in”』を開催します。
水戸部はこれまで主に「顔」をモチーフに、油絵具を豪快に積層した塑像のような作品を制作し、その作品群を通して、人種や性別による差別や誤解からうまれる社会問題や、政治や資本主義がもたらす経済社会の弊害を映し出してきました。
本展は、水戸部が初めて本格的に取り組んだ立体作品と、レコードジャケットを支持体に描いた平面作品、そしてインスタレーションで構成されます。圧倒的な絵の具の物質感と重量感をもって存在する「座る人」の胸には、ヒップホップ界のスーパースターの名前が記され、コラージュされた複数枚のレコードジャケットの上には、韻を踏むトラッシュ・トーカーとしても有名だったボクシング界の英雄が描かれます。本展示で水戸部は、1960年にアメリカで行われた「座り込み」という非暴力的な抵抗運動と、コミュニティを超え、ジャンルを横断しながら進化を続けるヒップホップ・カルチャーのヒストリーを交差させ、平和的な方法で自由になることを示唆します。
アーティストステートメント
沖縄の座り込みが話題になったある⽇。 私はウィーンから⽇本のニュースを眺めていた。
島国で⽣まれ育った私には国境という感覚⾃体が希薄だ。沖縄も同じ⽇本という国なのに、どうしてこんなに対⽴してしまうんだろう。
トランプ⼤統領の登場に象徴されるように、世界各地で対⽴や分断が顕著になった現代、1960年に起きたランチカウンター”座り込み”から学べることがあるかもしれない。
当時、座り込みによる抗議活動は、⼈種問題の平和的解決において⾮常に効果的だった。この運動がなぜ成功したのか、どうすればその成功を再現できるのか考えてみる。
闘争の戦略として、最も効果的なのは⼈々の注意を引くことだ。座り込みは、まさにそれを実現した。1960年のこの⽇、4⼈のアフリカ系アメリカ⼈の若者が、ノースカロライナ州グリーンズボロのウールワース店の⽩⼈専⽤ランチカウンターに 座り込み、アメリカの歴史上最も顕著で効果的な抗議運動を開始した。
もちろん、批判的な意⾒もあったが、これらの抗議活動が幾度も報道されることによって、無知で無関⼼な⼈々の⽬を覚まさせ、⽇常的な差別や無意識のうちに他者の尊厳を傷つけている⾏為に気づかせることができた。隔離された南部で権⼒の中枢を握る⽩⼈は、抗議⾏動に対応しなければならなかった。
ある活動家は⾔った。「私たちは愛など求めていない。私たちはただ、座ってコーヒーを飲みたいだけなのです」。
社会的抗議と政治的活動が融合し、永続的な政治的・法的変化をもたらすという稀有な瞬間に、私たちは再び⽴ち会うことになったのかもしれない。そうした観点から、1960年のランチカウンターの座り込み運動は、それがいかに可能であるかを⽰す刺激的な例であると私は思う。
さて、私は⽇本に帰国し、座る⼈をつくった。この場所から動けないほど、重く重く、⽴ち退けられないほど、重く。 私は、座る⼈を作った。
アーティストプロフィール
水戸部 七絵
2021 年から東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画 在籍。2022 年からオーストリアのウィーン美術アカデミーに交換留学、アラステア・マキンブン(Alastair Mackinven)に師事する。一斗缶に入った油絵具を豪快に手で掴み、重厚感のある厚塗りの絵画を制作する。初期にはマイケル・ジャクソンなどの著名人やポップ・アイコンとなる人物を描いた作品を制作していたが、2014 年のアメリカでの滞在制作をきっかけに、極めて抽象性の高い匿名の顔を描いた「DEPTH」シリーズを制作し、2016 年愛知県美術館での個展にて発表、2020 年に愛知県美術館に「I am a yellow」が収蔵される。2022 年に初の作品集「Rock is Dead」を出版。「Rock Star」、「TIME」シリーズをはじめ、近年では、パンデミック期間に自身がネットニュースのトピックからインスピレーションを得て制作した「Picture Diary」シリーズを発表するなど、画家の視点で社会をリアルタイムに捉え、時にはポップに時には皮肉的に大胆かつ独創的なスタイルで時代を表現する。
主な個展に、2023年「黒い顔・白い顔」rin art association 、2022年「project N 85 水戸部七絵|I am not an Object」東京オペラシティ、2016年 「APMoA, ARCH vol.18 DEPTH ‒ Dynamite Pigment -」愛知県美術館など。
主なグループ展に、2022年「OKETA COLLECTION: THE SIRIUS」スパイラルガーデン、2021年「VOCA展2021」上野の森美術館、2020年「-Inside the Collectorʼs Vault,vol.1-解き放たれたコレクション展」WHAT、2020年度第3期コレクション展「私は生まれなおしている─令和2年度新収蔵作品を中心に─」愛知県美術館、2019年、「高橋コレクション展 アートのふるさと」鶴岡アートフォーラム、2018年「高橋コレクション 顔と抽象―清春白樺美術館コレクションとともに」清春白樺美術館、2017年「アブラカダブラ絵画展」市原湖畔美術館、「千一億光年トンネル」ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションなどに参加。
主なパブリックコレクション
愛知県美術館
公式HP:https://nanaemitobe.com/
水戸部七絵+ agnès b. used item project
アニエスベーでは、お客さまやスタッフから回収したアニエスベーの古着をヴィンテージとして販売し、収益金を一般社団法人タラオセアンジャパンなどに寄付する活動を続けています。今回、ダメージが大きく販売することが難しいTシャツなどを使用して、水戸部七絵さんに作品を制作していただきました。作品は本展示会場で販売し、その収益金の一部を寄付します。寄付先に関する情報は、後日HPにてお知らせいたします。
[English follows]
Nanae Mitobe
“Sit-in”
Venue: agnès b. galerie boutique
2F, 5-7-25 Minami-Aoyama, Minato-ku, Tokyo
Date: December 16th, 2023 – January 21th, 2024 (Closed on Mondays)
Opening hours: 12:00 – 19:00
Winter holidays December 27th, 2023 – January 5th, 2024
PR cooperated by: YN Associates
Installation: Kenzo Kasuya
Agnès b. galerie boutique will be holding Nanae Mitobe’s solo exhibition “Sit-in” from December 16th (Sat), 2023 to January 21th (Sun), 2024.
Until now, Mitobe has mainly created statue-like artworks using “faces” as a motif with dynamic layers of oil paint. Through her works, she reflects social problems that arise from discrimination and misunderstanding based on race and gender, as well as the negative effects of economic society caused by politics and capitalism.
This exhibition will consist of Mitobe’s first full-scale three-dimensional pieces along with two-dimensional works using record jackets as supports, and an installation.
The name of a superstar in the hip-hop world is written on the chest of the sitting person piece with the overwhelming sense of substance and weight of the paint. A boxing hero, who was also famous as a rhyming trash talker, is depicted on top of a collage of record jackets.
In this show, Mitobe intersects the history of the nonviolent resistance movement known as the “sit-ins” that took place in the United States in 1960, and the history of hip-hop culture, which continues to evolve by transcending communities and genres, hinting to be free in a peaceful way.
Artist Statement
When the sit-in protests in Okinawa became a hot topic, I was watching the Japanese news from Vienna.
As someone who was born and raised in an island country, I have a very little sense of borders. Even though Okinawa is part of the same country, Japan, I wonder why there is so much confrontation there.
At a time symbolized by the rise of President Trump, when conflicts and divisions have become evident around the world, there may be something we can learn from the lunch counter sit-ins that occurred in 1960.
At that time, the sit-in protests were very effective in resolving racial issues peacefully. Why was this movement so successful? How can we replicate that success?
The most effective fighting strategy is to get people’s attention. The sit-in accomplished just that.
On this day in 1960, four young African Americans sat down at the whites-only lunch counter of a Woolworth store in Greensboro, North Carolina, and began one of the most prominent and effective protests in American history.
Of course, there were critical opinions, but the repeated coverage of these protests has awakened the ignorant and indifferent people, making them aware of everyday discrimination and acts that unconsciously hurt the dignity of others. Even the white people who held the center of power in the segregated South had to respond to these protests.
One activist said: “We’re not looking for love. We just want to sit and drink coffee.”
We may once again be witnessing a rare moment in which social protest and political activism combine to achieve lasting political and legal change. From this perspective, I think the lunch-counter sit-ins of 1960 are an inspiring example of how it is possible.
When I returned to Japan I created a person doing a sit-in. I made it so heavy that it can hardly be moved, so heavy that can’t leave its place. Yes, I made a sitting person.